「なにがなんでも連れ帰って、自分のものにしたい!」
昔はそう思っていました。
若かりし頃は目に映るもの全てが魅力的で、雑貨店やアパレルショップに並ぶ商品を買えるだけ買いたい!と願うほど。
まさに強欲の化身。財布を開けばドーパミンどばどば。テーマソングはマドンナ様のMatirial girl。
買い物が楽しくて楽しくて仕方ない日々を過ごしました。
しかし、その結果…
家の中は物だらけになり、飾った小物には埃が積もり、好きだけど着ない服でクローゼットは爆発寸前。
本棚には、背表紙のアピールばかりで全く動かない既読本。
買うだけ買って手入れされず、管理できていない物で埋められた2DK賃貸…
その中で特に、混沌を極めたのが衣類でした。
実家から持ち込んだ服と、新しく買った服が混在し、無理やり衣装ケースに押し込めた服はシワだらけ。
枚数が多くて1枚当たりの着る頻度が少ないので、劣化は遅く、見た目がきれいなので処分できない。
1シーズンに冬用アウター複数枚を使い分けるから、シーズン終わりのクリーニング代が結構かかる。
取り出すのも、しまうのも、一苦労!
あーもう、疲れた。
実家を出る直前、掃除に目覚めて、持ち物をたくさん手放したはずなのに、就職して買い物フィーバーで散々諭吉を羽ばたかせた末、物量に苦しむって。
いったいなにをやっとるんだ私は。
ぞんざいに扱われている物をぐるりと見渡し、もう手に取らなくなった服を資源ごみ用にまとめ始めました。
それから10年経った今、家族が増え、自分以外の持ち物も増え、スッキリとした家というわけではありませんが、自分の物は大幅に減りました。
衣類は満遍なく着ることができる枚数(各シーズン3パターンずつ)、
冬用アウターは冠婚葬祭用を別として1枚のみ。10足以上あった靴も4足に。
既読本は十分読んだことを納得した上ですべて手放し、現在はゆっくり読みたい本2冊と頂き物の2冊のみを所有。
埃が積もった小物もさよなら。
好きで買ったはずの物たちは、もうとっくに「使うためのもの」という役割を終えていました。
必要か否か判断することも、実際に処分することも、量が多い分、めちゃ大変。
「買う」のは、お金があれば簡単です。でも、その逆は難しいのです。
時間をかけて物を手放した今、どんなに素晴らしい物でも、「自分のものにしたい」という気持ちはすっかり失せました。
理由は、物の処分を経たこと、家族が増えて経済状況を鑑みたことの両方です。
訪れればあんなにテンションの上がった雑貨屋やアパレルショップも、客観的に落ち着いてディスプレイを見ることができるようになりました。
お店に並んだ素敵な商品は、同じものが整然と並べられているから美しいのだとやっと理解できました。
並べられた中から一つ買って、家の中にぽんと飾って、店頭と同じくらい輝いてくれるかどうかは自分次第なのです。
物だらけ、埃だらけの棚の上に置いても、その物の魅力は引き出せません。
手入れの手間をかけてでも飾りたい!使いたい!という情熱がないと、持っていても持っていないのと同じ。
もう、衝動買いすることは無くなりました。
これまで無駄にしてきた物との別れを経て、一人の元・買い物バカはようやく心穏やかに過ごせています。
買い物時のテーマソングは、よく行く近所のスーパーの店内BGM(インストゥルメンタル)です。
マドンナ様もMaterial girlも好きだけどね!